お問い合わせ QandA 会社案内 リンク トップ
植え付け1トップ


>> 産地を訪れた記録一覧 に戻る


植え付け1
daimei-1
 2日目は朝からあいにくの小雨模様になりました。しかし植え付けの日程は変えられません。今日と明日の2日間で一つの藺田の植え付けを完了するのです。
 早朝、さっそく植え付け前の準備にかかります。まず株分けした苗の束をビニール袋に入れます。これを藺田の所々に配置して、ここから苗を取って植え付けをするためです。次に約20cm位の長さに、苗の長さを切り揃えます。縄で縛った束ごとザクッと落としますが、切れ味は最高です。「石河さん、指を落とさないように」と言われました。


植え付け2
daimei-2
 今日・明日の分まで植え付ける苗を用意するには、かなりの量が必要です。60束は切りました。切り落とした苗の先は、あっという間に軽トラック一杯になってしまいました。たかが草ですが、これだけの量になると大変です。近くの畑に捨てに行きます。肌寒いのですが、体を動かす作業はそんなことも吹っ飛びます。きれいに掃除をして準備は整いました。昼食を取り、午後から福本さんご夫婦、息子の真也君、そして鏡君と私の5人で植え付けを行います。


植え付け3
daimei-3
 藺田に着きました。藺田の長さは約100m、まず用意した苗の入った袋を5m位の間隔で端から端まで置いて行きます。植え付けは藺田の右側から行います。そして一列終了すると、順に左側の列に移って行きます。
 初めに福本さんが藺田に四角状の型を付けて行きます。この四角の角の場所に藺草を植え付けます。この四角の大きさは約20cm,左右6か所ずつ植えて後ろに下がって行きます。この時点で自分で計算してみました。枠が20cm間隔ということは、1mで5段あります。横1段に6本ずつなので、1m毎に6×5の30本植えることになります。それが100mですから、一列端から端まで何と3,000本植えなければなりません。
 福本さんに植え方を教わります。「今日は一列やってください」と言われました。さっそく植え付けを開始します。やり方はそれほど難しくありません。藺田は水を含んで軟らかく、苗がスッと入ります。


植え付け4
daimei-4
 夏の刈り取り期に藺田に入りましたが、その時とはまったく土の状態が違います。膝の半分位が埋まってしまいます。普通の長靴では足を抜くときに脱げてしまい、今回用意したタビ(誉大活躍!)でないとやはりダメです。左手に苗を持ち、右手で滑らすように苗を植えて行きます。しかし苗の根が絡み合っていて、なかなかコンスタントに苗一本ずつが取り出せません。また同じ足の位置で植えつけられる範囲は、せいぜい2段です。片足ずつ後ろに移動させなければなりません。ぬかるんだ粘土質の土は、力を入れてゆっくりと足を抜かないとダメです。慎重に抜かないと、バランスを崩して後ろにひっくり返ります。
 この植え付けをすることが決まった時、JAの谷川さんに言われました。「植え付けは人生です。皆さん自分の人生を振り返られます。石河さんも自分の人生と向き合って下さい。」この意味が後々分かってきます。


植え付け5
daimei-5
 自分の列の左側に、いずれ次の人がやって来ます。ですから絶えず苗の袋を通過したら、自分の左側に移動させておく必要があります。既に一列終わった福本さんが、ついに私の左側にやって来ました。競争で言えば、私は周回遅れと言ったところでしょうか。左列の早い人に追い越される時は、自分と場所を入れ替わります。そのまま自分の左側の人が進んで行ってしまうと、苗の袋に手が届かないからです。袋は私の列の右側に置いてあるからです。
 福本さんと列を入れ替わります。見渡してみると、福本さんも奥さんも早いです。私たちの倍近いスピードで植えつけて行きます。


植え付け6
daimei-6
 今度は息子さんが左側に来ました。そしてしばらくすると今度は奥さんが来られました。私は20m位進んだ辺りから、中腰の体勢がきつくなり、少し進んでは腰を伸ばさずにはいられません。一旦植え付けに入ると、腰をおろして休む事はできません。左側に誰かやって来た時は、少し話ができて気が和みますが、一人の時はまさに自分自身との闘いです。休めばそれだけ遅れて行きます。少し進んでは、無意識に後ろを見てしまいます。しかし進んだ距離よりも先はまだまだ遠い。


植え付け9
daimei-9
 以前、永平寺の宮崎奕保(みやざきえきほ)禅師が、「悟り」について語られたTVを見た事がありました。禅師曰く、「多くの修行僧が悟りの境地に達したいと願い、日々の修行を重ねる。しかし悟りという特別な境地など無いことが分かってくる。それが悟りである。」と話されていました。禅問答のような、明解な話でした。
 日々修行を重ねる修行僧ですら「無」になることが難しいのですから、私などは雑念のスクランブル交差点です。淡々と植え付けをしていても、頭の中・心の中で絶えず何か話している自分がいます。事柄も次から次へと変わり、特になまかわな自分の出現・ネガティブな思考は後を絶ちません。「トイレ休憩をした序に、タバコを吸いたいな」「俺は畳店なのに、こんな農作業をして何か役に立つのだろうのか」「腰が痛いから、思い切ってリタイアしてしまおうかなあ」.....言いだしたら、それはそれは恥ずかしい事ばかりです。「お前、そんなことはできないゾ」色々な自分が出てきては、心の中で葛藤が始まります。
 「植え付けは人生」という谷川さんの言葉を思い出しました。私独自の解釈だとは思いますが、まさにその通りです。自分の意思でやっているのですから、リタイアすることもできるでしょう。しかし仮にこれが自分の「人生」だとしたら、リタイアするわけには行きません。今の一瞬は、私の人生の一コマだからです。「たとえ遅れてでも、最後まで到達するぞ。」と、何度も自分に言い聞かせました。


植え付け7
daimei-7
 ようやく列の終わりが近づいて来ました。途中あれだけ辛かったのに、何故か植え付けを「楽しんでいる」自分に気づきます。楽しんでいるというのは大げさかもしれませんが、左手の苗の持ち方を微妙に変えてみたり、うつむく角度を変えてみたり、少しでも早くしかも自分に負担のかからないやり方を無意識に探していました。
 「この道を行けばどうなるものか・・・踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる」私の好きな一休宗純(京都大徳寺)の言葉です。何も自費でここまでやって来て、辛い作業など誰もやらないけれど、この一植え一植えは、自分の歩んだ足跡の中に確実に刻まれて行く。そう思うと、自分はとても貴重な時間を過ごしているのだと思えてきました。そこに気づき・価値・成長を見いだせるのだと。何かスピリチュアルな思考ですが、少し力が湧いて来ました。


植え付け8
daimei-8
 生まれて初めての植え付けで、この100mの洗礼は強烈なものがありました。それでも何とかゴールに辿り着く事ができました。ちょうど終わった所で、福本さんの奥さんがお茶タイムにしますと言われました。朝からの小雨は上がりましたが、風が出てきてさらに肌寒くなっていました。こんな時に温かい飲み物と甘いお菓子は、何よりの回復力になります。私たちの初めての植え付けだったこともあり、色々と話が盛り上がりました。そこには同じ体験をした者同士だから通じ合える、何かやりきった充実感がありました。
 今日はここで切り上げ、明日残りを行います。明日、私たちに課せられた量は2列(100m×2列)ずつ。今日行った2倍の長さです。産地言葉で「二本」です。
 明日もまた「人生」と向き合わされます。明日は、これからの将来と向き合ってみようと思います。強力な助っ人「植え付け名人」も呼んであるとの事、今から楽しみです。


畳‐岐阜ドットコム 有限会社 石河製畳店
 〒500-8066 岐阜市下太田町3番地 PHONE. 058-262-1615 FAX. 058-262-1628