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網外し


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網外し1
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 刈り取りをしている向こう側は、まだ網がかかっているのが見えます。網は杭にしっかりと結ばれて、膨大な量の藺草を支えています。この作業は通常二人で行います。まず杭から網の端を外します。すると藺草は重みで横に倒れた格好になります。藺草の先が網に複雑に絡んでいるので、力ずくではとても外せません。
 吉住幸美先生にやり方を教えてもらいます。藺草農家の奥さんは、皆さん本当に働き者で慣れていらっしゃいます。頭が下がります。


網外し2
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 「右手でこういう感じで」と、幸美先生からやり方を教わりました。二人で網を揺するように外していきます。まずどちらかが先に網を引きます。それを合図に相手が網を引き返し、あとは交互に引き合いながら上に網を外します。最初に合図を出す時にお互い見合ってしまうと上手く行きません。やっている内に、だんだん呼吸がつかめて来ました。二人の呼吸が大事です。
 網はちょうどテニスコートの網ぐらいでしょうか。いくつもの網をつなぎながら幅100mに掛けてあるのですから、すごい網の量です。


網外し3
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 網が外れる時はこんな感じ(左端写真)になります。ようやく100mを外し終わる道路際まで来ました。網を外すと今度は杭を抜いていきます。ほとんどが丸太の木杭です。藺田は粘土質なので、抜くときに回しながら力を入れないと抜けません。抜き終わった丸太は相当な本数、これを用水でブラシで泥を落として綺麗にし、また来年の網かけに備えます。泥で汚れた道具を洗うのも結構大変でした。道具はちゃんと納屋に収納します。これで午前中の作業は終わりました。時刻は11時を少し回った所でした。
 真夏のこの刈り取り期は、午後の早い時間は作業をしません。太陽の陽で藺草が傷んでしまうからです。それに人間も休まなければなりません。何といっても1ヶ月の長丁場です。昔から農家の皆さん昼寝をされます。この昼寝が体力を回復させる源になるのです。

 翌日も夜中から、また同じスケジュールをこなしました。畳店の仕事もキツイと思うことがありますが、夏の刈り取り期、これら一連の作業を約1ヶ月間続ける農家の仕事に比べればキツイうちに入りません。内心、家業が農家ではなく畳店で良かったと思いました。


網外し4
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 今回は吉住さんのお宅に2泊3日お世話になり、住食を共にさせて頂きました。TV番組の一宿一飯の・・・ではありませんが、五代目にも言われたような、決して撮影の為などという形式的なものではなく、皆さんと同じ作業をさせて頂くことができました。「また来年も待ってますから。」と吉住さんに笑って言われましたが、「はい」という言葉が出てきません。それほどキツイ3日間でした。
 吉住さんは本当に優しい方でした。身の回りの細かな事まで気を使って頂き、洗濯までして頂いた奥さんの幸美さん、熊本の美味しいものをたくさん御馳走して頂いた親父さん夫婦、皆さん本当にありがとうございました。
 帰る時は皆さんの優しさとやりきった充実感とが交錯し、感激のあまり言葉になりませんでした。本当にかけがえのない経験をさせて頂きました。修業の一つをクリアしたような気がします。この体験は私の畳職人としての今後に、必ず生かされてくる事と思います。
 私が刈り取った藺草で織った畳表を、是非使わせて頂きたいとお願いして、岐阜への帰途に着きました。


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